「非常食、ちゃんと備えていますか?」
こう聞かれると、「うーん、一応何かは置いてあるけど…」と、ちょっと自信なさげに答えてしまう方、意外と多いのではないでしょうか。地震や台風、大雪、そして近年では感染症の拡大など、私たちの生活はいつ何時、当たり前が当たり前でなくなるか分かりません。そんな「もしも」の時に、自分と大切な家族を守るための命綱となるのが非常食です。
でも、いざ非常食を準備しようと思っても、「何をどれくらい揃えればいいの?」「乾パンと缶詰だけでいいのかな?」「そもそも、どこに置けばいいんだろう?」と、次から次へと疑問が浮かんできますよね。
この記事は、そんなあなたのための「非常食の教科書」です。特定の商品をおすすめするような宣伝は一切ありません。その代わりに、非常食を備える上で本当に大切になる「考え方」「選び方の基準」「管理のコツ」「活用のアイデア」といった、本質的な情報を詰め込みました。この記事を読み終える頃には、あなたも自信を持って「わが家の非常食はバッチリです!」と言えるようになっているはず。さあ、一緒に「もしも」への備え、始めましょう!
非常食の基本の「き」
まずは基本から。そもそも非常食とは何か、なぜ必要なのか、どれくらい備えればいいのか。ここをしっかり押さえることが、失敗しない備蓄への第一歩です。
非常食って、そもそも何?
「非常食」と聞くと、多くの人が乾パンやアルファ米、長期保存できる特別な缶詰などを思い浮かべるかもしれません。もちろん、それらも立派な非常食です。しかし、非常食の定義はもっと広いものなんです。
簡単に言えば、「災害などの非常時に、ライフライン(電気・ガス・水道)が止まっても食べられる食事」がすべて非常食です。つまり、普段から家にあるカップラーメンやレトルトカレー、パスタ、お菓子なども、工夫次第で立派な非常食になるのです。
大切なのは、「非常時専用の特別な食べ物」と固く考えすぎないこと。普段の食生活の延長線上に「もしも」の備えを組み込んでいく。この柔軟な考え方が、無理なく備蓄を続けるコツになります。
なぜ非常食を備える必要があるの?
「災害が起きたら、避難所に行けば何とかなるんじゃない?」そう思う方もいるかもしれません。しかし、現実はそう甘くない可能性があります。
大規模な災害が発生すると、電気・ガス・水道といったライフラインが完全にストップすることがあります。復旧には数日から、場合によっては1週間以上かかることも。また、物流が滞り、スーパーやコンビニの棚からあっという間に食料品が消えてしまいます。公的な支援物資がすべての人に行き渡るまでには、通常3日程度かかると言われています。この「空白の数日間」を、私たちは自力で乗り切らなければならないのです。
さらに、避難所の生活も決して快適とは限りません。多くの人が集まる場所では、食事が十分に行き渡らなかったり、プライバシーの確保が難しかったり、精神的なストレスも大きくなります。可能な限り、住み慣れた自宅で安全を確保しながら過ごす「在宅避難」が推奨されているのも、こうした理由からです。そして、在宅避難を可能にする大前提が、食料と水の備蓄、つまり非常食なのです。
どれくらいの量が必要?最低限の備蓄日数
では、具体的にどれくらいの量を備蓄すればいいのでしょうか。国や多くの自治体が推奨しているのは、「最低でも3日分、できれば1週間分」です。
これは、災害発生から公的な支援が本格化するまでの期間を考慮した日数です。特に、南海トラフ巨大地震や首都直下型地震のような大規模災害が想定される地域では、1週間分以上の備蓄が望ましいとされています。
必要な量は、当然ながら家族構成によって変わります。以下の表は、あくまで一般的な目安です。ご自身の家族構成に合わせて計算してみてください。
| 対象 | 1日の水分目安 | 1日のエネルギー目安 |
| 成人男性(活動レベル普通) | 3リットル | 約2,200kcal ± 200kcal |
| 成人女性(活動レベル普通) | 3リットル | 約1,400~2,000kcal |
| 子ども(年齢による) | 1~2リットル | 年齢に応じた量 |
| 高齢者 | 2リットル | 身体活動量に応じた量 |
この表を基に、例えば「大人2人、小学生1人」の3人家族で考えてみましょう。1週間分を備えるなら、水は「(3L + 3L + 2L) × 7日間 = 56L」が必要になります。食事も同様に、家族全員が1週間に必要な総エネルギー量を計算し、それを満たすだけの食料を備える必要があります。赤ちゃんがいるご家庭なら粉ミルクや液体ミルク、ペットがいるならペットフードも忘れずに日数分確保しておきましょう。
失敗しない!非常食の選び方
備えるべき量がわかったら、次はいよいよ「何を備えるか」です。ここでは、商品名ではなく「選ぶときの観点」を詳しく解説します。このポイントを押さえれば、あなたのご家庭にピッタリの非常食ラインナップが見えてきますよ。
ポイント1:栄養バランスを考えよう
非常時だからといって、お腹が膨れれば何でもいいわけではありません。特に避難生活が長引くと、栄養バランスの偏りが体調不良やストレスの原因になります。炭水化物ばかりに偏らないよう、意識して多様な食品を備えることが重要です。
- 炭水化物(エネルギー源):体を動かすためのガソリンです。アルファ米やレトルトのおかゆ、乾麺(パスタ、うどん、そうめん)、餅、シリアル、クラッカーなどがこれにあたります。
- タンパク質(体を作る):体力や免疫力を維持するために不可欠です。肉や魚の缶詰(サバ、ツナ、焼き鳥など)、コンビーフ、大豆製品(レトルトの煮豆、高野豆腐)、魚肉ソーセージなどを備えましょう。
- ビタミン・ミネラル(体の調子を整える):ストレスや疲労回復に役立ちます。野菜ジュースや果物の缶詰、ドライフルーツ、ナッツ類、フリーズドライの野菜スープなどで補給できます。
- 食物繊維(お腹の調子を整える):避難生活では便秘になりがち。玄米や雑穀米、豆類の缶詰、乾燥わかめ、切り干し大根、シリアル(オールブランなど)が役立ちます。
これら「炭水化物」「タンパク質」「ビタミン・ミネラル」「食物繊維」をバランス良く揃えることを意識してみてください。普段の食事と同じように、主食・主菜・副菜をイメージすると考えやすいかもしれませんね。
ポイント2:調理不要?それとも簡単調理?
災害発生直後は、電気もガスも止まり、火を使える状況にないかもしれません。そんな時でも食べられるものと、少し落ち着いてから調理できるものを、バランス良く備えるのが賢い方法です。
- レベル1:調理不要(そのまま食べられるもの):災害発生直後の0~1日目に活躍します。缶詰、栄養補助食品(バータイプ、ゼリー飲料)、お菓子(ビスケット、チョコレート、ようかん)、ドライフルーツ、ナッツ、魚肉ソーセージなどがこれにあたります。封を開けるだけですぐに食べられるのが最大の強みです。
- レベル2:お湯や水を注ぐだけのもの:ライフラインが一部復旧したり、カセットコンロが使えるようになったりしたら出番です。アルファ米、フリーズドライのスープや味噌汁、カップ麺などが代表格。温かい食事は、冷え切った心と体を温めてくれます。
- レベル3:簡単調理が必要なもの:カセットコンロと鍋があれば調理できるものです。レトルト食品(カレー、牛丼の具など)、乾麺、缶詰を使った料理などが考えられます。少し手間をかけることで、食事の満足度が格段にアップします。
この3つのレベルの食品を、例えば「レベル1を2日分、レベル2を3日分、レベル3を2日分」というように、時間経過を想定しながら組み合わせるのがおすすめです。
ポイント3:味のバリエーションは心の栄養
想像してみてください。不安な避難生活の中で、毎日同じ味のものを食べ続けることを…きっと、気分も滅入ってしまいますよね。非常時の食事は、単なる栄養補給だけでなく、心の安定を保つための重要な要素です。
だからこそ、味のバリエーションを豊かにすることを意識しましょう。和食(サバの味噌煮缶、切り干し大根)、洋食(ミートソース缶、コーンスープ)、中華(麻婆豆腐の素、中華丼の具)など、いろいろなジャンルの味を揃えておくと、飽きずに食べ続けられます。
そして、絶対に忘れないでほしいのが「甘いもの」です。チョコレート、キャンディー、ようかん、クッキー、フルーツ缶など、甘いものは緊張を和らげ、手軽にエネルギー補給もできる優れた非常食です。特に小さなお子さんがいるご家庭では、普段食べ慣れているお菓子が大きな安心材料になります。ぜひ、おやつも忘れずに備蓄リストに加えてください。
ポイント4:アレルギーや健康状態への配慮
家族の中に、食物アレルギーを持つ方、持病がある方、乳幼児、高齢者はいませんか?非常食を備える上で、こうした「要配慮者」への対応は最優先事項です。
食物アレルギーをお持ちの方がいる場合は、アレルギーの原因となる物質が含まれていない食品を、普段から意識してストックしておく必要があります。食品表示の「特定原材料7品目(えび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生)」および「特定原材料に準ずる21品目」を必ず確認しましょう。近年では、アレルギーに対応した長期保存食も増えてきているので、情報を集めてみるのも良いでしょう。
また、高齢者の方には、硬いものが食べにくい場合もあります。おかゆや、柔らかく煮込んだレトルト食品、介護食などを準備しておくと安心です。乳幼児には、液体ミルクや使い捨ての哺乳瓶、ベビーフードが必須です。持病で食事制限(塩分制限、カロリー制限など)がある方は、かかりつけ医に相談の上、食べられるレトルト食品などを備えておくと良いでしょう。
ポイント5:賞味期限と保存方法
非常食を選ぶ際、つい賞味期限の長さに目が行きがちです。「5年保存」「7年保存」といった商品は確かに心強いですが、それだけが正解ではありません。大切なのは、賞味期限をきちんと管理し、無駄にしないことです。
長期保存が可能な食品は、一般的に水分が少なく、密閉・殺菌されているという特徴があります。これらは、いざという時のための「保険」として備えるのに適しています。
一方で、賞味期限が1~3年程度のレトルト食品や缶詰は、後述する「ローリングストック」という方法で管理するのに向いています。普段の生活で消費しながら備蓄を維持できるため、食品を無駄にすることがありません。
保存場所も重要です。ほとんどの食品は、直射日光を避け、湿気の少ない涼しい場所での保管が推奨されています。床下収納や押し入れの奥、キッチンのシンク下などが一般的な保管場所ですが、1か所にまとめず、複数の場所に分けておく「分散備蓄」も有効です。
ポイント6:忘れがちな「水分」の備蓄
食事以上に、生命維持に直結するのが「水」です。人間の体は約60%が水分でできており、水がなければ数日で命に関わります。飲料水は、1人1日3リットルを目安に備蓄しましょう。これは飲料水だけでなく、簡単な調理に使う分も含めた量です。
備蓄方法としては、長期保存可能なペットボトルのミネラルウォーターが最も手軽です。2リットルのペットボトルを箱買いして、家の数か所に分けて置いておくと良いでしょう。ウォーターサーバーを利用しているご家庭は、予備のボトルを常に1本多めにストックしておく習慣をつけると、そのまま非常時の備えになります。
また、お風呂の水を溜めておく習慣も、トイレなどの生活用水として非常に役立ちます。飲料水とは別に、生活用水の確保も考えておくことが大切です。
非常食だけじゃない!備えを万全にするアイテム
非常食があっても、それを食べるための道具がなければ意味がありません。ここでは、食事に関連して、一緒に備えておきたいアイテムをご紹介します。
調理・食事に必要なもの
ライフラインが止まった状況を想定して、以下のものを揃えておきましょう。これらがあるだけで、食事の幅がぐっと広がります。
- カセットコンロ・カセットボンベ:温かい食事を作るための必需品。ボンベは1本で約60分燃焼するのが一般的です。1週間分なら、最低でも6~7本は用意しておきたいところです。
- 鍋・やかん:お湯を沸かしたり、レトルト食品を温めたりするのに使います。取っ手が取れるタイプの調理器具セットは、コンパクトに収納できて便利です。
- ライター・マッチ:カセットコンロの点火装置が故障した場合に備えて。湿気らないように密閉できる袋に入れておきましょう。
- ラップフィルム:これが驚くほど万能です!お皿に敷けば、使用後にラップを捨てるだけで済み、貴重な水で食器を洗う必要がありません。食品の保存や、ケガをした際の応急処置にも使えます。
- アルミホイル:フライパン代わりに使ったり、食材を包んで蒸し焼きにしたりと、調理で活躍します。
- キッチンバサミ:包丁とまな板がなくても、食材やレトルトの袋を切ることができ、非常に便利です。
- 缶切り・栓抜き:プルトップではない缶詰や瓶詰を開けるために必須です。多機能ナイフに付いているものでもOK。
- 使い捨ての食器・カトラリー:紙皿、紙コップ、割り箸、プラスチックのスプーンやフォークなど。衛生管理と節水のために、あると非常に助かります。
衛生管理に役立つもの
断水時には、手や食器を十分に洗うことができず、食中毒のリスクが高まります。食事の前後の衛生管理も、防災の一部と考えましょう。
- ウェットティッシュ・アルコール消毒液:食事の前の手指の消毒に欠かせません。
- ペーパータオル:布巾の代わりに使い捨てできるので衛生的です。
- 大きめのゴミ袋:生ゴミや使用済みの食器などを密閉して保管するために、多めに用意しておきましょう。防臭効果のあるものがおすすめです。
- 密閉できる保存容器:食べ残しを一時的に保管するのに役立ちます。
無駄にしない!賢い備蓄と管理のコツ
せっかく備えた非常食も、いざという時に賞味期限が切れていたら元も子もありません。ここでは、食品を無駄にせず、常に fresh な状態を保つための管理術を紹介します。
「ローリングストック法」をマスターしよう!
「非常食を備えなきゃ!」と意気込んで、5年保存の立派なセットを買ったものの、押し入れの奥にしまい込んで、気づいた時には賞味期限切れ…。これは、非常食あるあるの失敗談です。
そんな失敗を防ぐための、最も賢くて無駄のない方法が「ローリングストック法」です。これは、特別なことではありません。簡単に言うと、「普段から食べている缶詰やレトルト食品などを少し多めに買っておき、古いものから順に消費し、食べた分だけ新しく買い足していく」という方法です。
この方法のメリットはたくさんあります。
- 賞味期限切れの心配が少ない:常に消費と補充を繰り返すので、食品が古くなるのを防げます。
- 食べ慣れた味を備えられる:非常時という特殊な状況でも、普段から食べ慣れた味は大きな安心感につながります。
- 経済的な負担が少ない:一度に高価な非常食セットを買う必要がなく、普段の買い物の延長で少しずつ備蓄を増やせます。
- 非常食を試す機会になる:定期的に食べることで、「このレトルトカレーは子どもには少し辛いかも」「このパスタソースは美味しいから多めにストックしよう」といった、家族の好みに合わせた調整ができます。
ローリングストックの実践はとても簡単です。
- ストックする食品を決める:まずは、缶詰、レトルト食品、乾麺、お米、飲料水など、日持ちがして普段の食事にも使えるものを選びます。
- 「日常用」と「備蓄用」の置き場を決める:キッチンの棚などに、「手前に置いた日常用から使い、なくなったら奥の備蓄用から補充する」というルールを決めます。
- 古いものから順番に使う:これが鉄則です。備蓄用の食品を使う際は、必ず一番古いものから取り出しましょう。
- 使った分を買い足す:備蓄用から1つ使ったら、次回の買い物の際に1つ買い足します。これを繰り返すだけで、常に一定量の食料が家にストックされている状態を維持できます。
備蓄品のリスト化と定期的な見直し
何をどれだけ備蓄しているか、すべて記憶しておくのは至難の業です。そこでおすすめなのが、備蓄品リストの作成です。ノートやスマートフォンのメモアプリなどを活用して、一覧表を作ってみましょう。
リスト化することで、「あ、水のストックが少なくなってきたな」「この缶詰、そろそろ賞味期限が近いから食べよう」といったことが一目でわかります。管理がぐっと楽になりますよ。
| 品名 | 数量 | 賞味期限 | 保管場所 |
| 水(2Lボトル) | 12本 | 2028年5月 | 押し入れ |
| アルファ米(五目) | 5食 | 2029年10月 | キッチン床下 |
| サバ味噌煮缶 | 6缶 | 2027年8月 | キッチン吊戸棚 |
| レトルトカレー | 10個 | 2026年12月 | キッチン吊戸棚 |
| カセットボンベ | 9本 | (製造年月日を記載) | 物置 |
そして、年に1~2回、例えば9月1日の「防災の日」や、3月11日の東日本大震災があった日などを「防災点検日」と決めて、家族みんなで備蓄品の中身を確認する習慣をつけましょう。リストと照らし合わせながら、賞味期限が近いものをチェックしたり、子どもの成長に合わせて内容を見直したりする絶好の機会になります。
収納の工夫で取り出しやすく
備蓄品は、ただしまい込むだけでは不十分です。いざという時に、すぐに取り出せる場所に、分かりやすく収納することが大切です。
ここでも重要になるのが「分散備蓄」という考え方です。すべての備蓄を1か所にまとめておくと、その場所が地震で家具の下敷きになったり、水害で浸水してしまったりした場合、すべてを失うリスクがあります。そこで、備蓄品をいくつかのグループに分け、家の中の複数の場所に保管するのです。
- キッチン周り:ローリングストック用の食品や、普段使いもできる調理器具。
- 押し入れ・クローゼット:飲料水や長期保存食など、すぐには使わないもの。
- 玄関・物置:持ち出し用のリュックに入れる非常食や、カセットコンロなど。
- 寝室:枕元に、水と手軽に食べられる栄養補助食品などを置いた「枕元防災セット」を。
- 自家用車:車で避難することも想定し、水、お菓子、栄養補助食品などを数日分積んでおく。
収納には、中身が見える半透明のコンテナボックスや、頑丈で持ち運びやすい取っ手付きの収納ケースが便利です。ケースに「水」「主食」「缶詰」といったラベルを貼っておくと、誰が見ても中身が分かります。
いざという時!非常食活用術とアレンジレシピ
備えが万全でも、いざという時にそれを活用できなければ宝の持ち腐れです。ここでは、限られた条件下で食事を豊かにするテクニックと、簡単なアレンジのアイデアをご紹介します。
限られた水と熱源で調理するテクニック
災害時に最も貴重な資源となるのが、水と熱源(燃料)です。これらを節約しながら温かい食事を作る、とっておきの方法が「パッククッキング(ポリ袋調理)」です。
これは、食材と調味料を高密度ポリエチレン製のポリ袋(湯煎に対応しているもの)に入れ、袋ごと鍋で湯煎する調理法です。この方法には、素晴らしいメリットがたくさんあります。
- 節水・節約:一つの鍋のお湯で、ごはん、主菜、副菜などを同時に調理できます。お湯は汚れにくいので、繰り返し使うことも可能です。また、袋のまま食べれば食器を洗う必要がありません。
- 衛生的:食材に直接触れずに調理でき、袋の中で火が通るので衛生的です。
- 美味しい:食材の旨味や栄養が袋の中に閉じ込められるため、普通に煮るよりも美味しく仕上がります。
例えば、アルファ米の袋に直接お湯を注ぐ代わりに、ポリ袋にお米と水を入れて湯煎すれば、鍋のお湯を汚さずにご飯が炊けます。同時に、別の袋でレトルトカレーを温めたり、野菜と肉の缶詰を煮込んだりすることも可能です。ぜひ一度、普段の生活やアウトドアで試してみてください。
簡単!非常食アレンジレシピのアイデア
毎日同じような非常食では、気持ちも沈んでしまいます。ほんの少しの工夫で、味に変化をつけ、食事を楽しくすることができます。ここでは、特定のレシピではなく、組み合わせのヒントをご紹介します。
乾パン・クラッカーのアレンジ
そのまま食べると口の中の水分を奪われがちな乾パンやクラッカーも、一工夫で立派な一品になります。
- 砕いて温かいスープや味噌汁に入れれば、クルトンのように楽しめます。
- 牛乳やジュース、コンソメスープなどに浸して柔らかくすれば、離乳食や高齢者向けの食事にも応用できます。
- 砕いたクラッカーとツナ缶をマヨネーズで和えれば、簡単ディップの完成です。
缶詰のアレンジ
味付けがしっかりしている缶詰は、アレンジの宝庫です。
- サバの味噌煮缶や水煮缶をほぐし、トマト缶と合わせて少し煮詰めれば、パスタソースやご飯にかけるソースになります。
- 焼き鳥の缶詰は、タレごと炊飯袋のお米と混ぜて湯煎すれば、美味しい炊き込みご飯風に。
- フルーツ缶詰のシロップは捨てずに、ゼラチンがあれば簡単ゼリーに。甘いデザートは心の癒しになります。
レトルト食品のアレンジ
温めるだけで美味しいレトルト食品も、少しのプラスアルファで満足度が上がります。
- レトルトのおかゆに、梅干し、塩昆布、なめたけの瓶詰、サケフレークなどを加えるだけで、様々な味の変化が楽しめます。
- レトルトカレーやミートソースをご飯にかけ、もしあればチーズを乗せ、バーナーなどで軽く炙ればドリア風になります。
乾麺のアレンジ
乾麺は茹でるのに水と時間が必要だと思われがちですが、裏技があります。
- パスタなどの乾麺は、食べる数時間前から水に浸けておくと、短い茹で時間(1~2分)で柔らかくなります。燃料の節約に繋がります。
- インスタントラーメンは、袋の上から細かく砕き、付属の粉末スープを振りかければ、そのままベビースターラーメンのようなおやつになります。
意外と知らない?非常食に関するQ&A
最後に、非常食に関してよくある質問にお答えします。
Q. 賞味期限が切れた非常食は食べられる?
A. まず、「賞味期限」と「消費期限」の違いを理解することが大切です。「消費期限」は、安全に食べられる期限のことで、これを過ぎたものは食べない方が安全です。一方、「賞味期限」は、「品質が変わらずに美味しく食べられる期限」を示します。多くの缶詰やレトルト食品、乾物などに表示されています。
理論上は、賞味期限を少し過ぎたからといって、すぐに食べられなくなるわけではありません。しかし、それはあくまで適切な環境で保管されていた場合の話です。缶が膨らんでいる、開けた時に異臭がする、変色しているといった場合は、絶対に食べないでください。最終的には自己責任での判断となります。賞味期限内に消費するローリングストックが、やはり最も安全で確実な方法と言えるでしょう。
Q. アレルギー対応の非常食ってどんなものがあるの?
A. はい、近年ではアレルギーを持つ方向けの非常食が数多く開発されています。特定原材料7品目や21品目を使用しないで作られたアルファ米やレトルトのおかず、お菓子などがあります。食品表示をよく確認することが第一ですが、「アレルギー対応」と明記された製品を探してみるのも一つの方法です。インターネットなどで情報を集め、普段からいくつか試しておくと、いざという時に慌てずに済みます。
Q. 赤ちゃんや高齢者向けの非常食で気をつけることは?
A. 「普段の食事にできるだけ近いもの」を備えるのが基本です。赤ちゃんには、お湯がなくてもそのまま授乳できる「液体ミルク」が非常に役立ちます。粉ミルクの場合は、衛生的な水と使い捨ての哺乳瓶もセットで備えましょう。月齢に合わせたベビーフードも必須です。
高齢者の方には、「食べやすさ(柔らかさ)」が重要です。レトルトのおかゆや、具材が細かく刻まれた介護食などを準備しましょう。また、持病の薬を飲んでいる方は、その薬と飲み合わせの悪い食品がないかなども、事前に確認しておくとより安心です。
Q. ペットのための非常食はどうすればいい?
A. ペットも大切な家族の一員です。人間の備蓄と一緒に、ペット用の備えも必ず行いましょう。避難所によっては、ペットフードの支援が後回しになることも考えられます。
基本は、普段食べ慣れているペットフードを、最低でも1週間分以上多めにストックしておくことです。これもローリングストックの考え方と同じですね。加えて、環境の変化によるストレスを和らげるために、おやつや好きなおもちゃも一緒に備えておくと良いでしょう。もちろん、お水も忘れずに準備してください。
まとめ:今日から始める、わが家の防災計画
ここまで、非常食の基本から選び方、管理方法、そして活用術まで、本当に大切なポイントに絞って解説してきました。たくさんの情報がありましたが、一番伝えたいのは「完璧を目指さなくてもいいから、まずは今日、何か一つ始めてみよう」ということです。
この記事を読んで、「うちには水が足りないかも」と思ったら、次の休日に少し買い足してみる。「ローリングストック、面白そう」と感じたら、キッチンにある缶詰の賞味期限をチェックしてみる。そんな小さな一歩が、あなたと家族の未来を守る大きな備えに繋がっていきます。
非常食を備えることは、「もしも」の時のためだけではありません。それは、日々の暮らしの中に「安心」という土台を築くことでもあります。この記事が、ご家庭で防災について話し合うきっかけとなり、具体的な行動を起こすための一助となれば、これほど嬉しいことはありません。

